日ごと、君におちて行く。日ごと、あなたに染められる。
そして会議へ向かう途中、事情を説明して来た帰りなのか華とすれ違った。
「……大丈夫か? さっきはきついこと言って悪かった」
「いえ。耕一さんの言っていることが正しいので」
弱々しく笑う華に、余計に心配になって来る。
「すみませんが、早退します」
「帰りはタクシーを使えよ? そのままちゃんと病院に行くこと。いいな?」
「心配し過ぎですよ。子供じゃないんですから」
「心配するに決まってるだろ。僕も、今日はなるべく早く帰るようにする」
本当に見れば見るほど心配になる。もう、仕事なんて放りだしてこのまま華と一緒に帰りたいくらいだ。
「大丈夫。ちゃんと家で大人しく寝ていますから。早く、会議に行ってください」
華に気を使わせるのも本末転倒だ。後ろ髪を引かれる思いで会議に向かった。
早退した華から、夕方頃にメッセージが届いた。
【病院に行ってきました。特に病気ではありませんでした。なので、もう心配しないでください】
僕に心配をかけまいと、すぐに連絡をくれたのだろう。その文面を読んで、とりあえずホッとする。
それでも体調が悪いのは事実だ。どうにか仕事を早く切り上げて、帰路に就く。
オフィスのあるビルを出てから、華に電話を掛けた。
(耕一さん、どうしたんですか? 仕事は?)
スマホの向こうから、さっきよりいくぶん明るくなった声を聞く。
「ああ、今日は早めに終えて来た。それより、夕飯の準備をするのはきついだろう。何か買って帰るよ。何が食べたい?」
(ありがとうございます。助かります。サラダが食べたいです。さっぱりしたもの)
「他には?」
(いえ、サラダだけで。あまり食欲がないので)
「でも、食べないと、余計に回復が遅くなる」
心配から、つい責めるような言い方になってしまう。
(すみません、本当に、今は食べる気にならなくて。その理由は耕一さんが帰宅してから話します)
「分かった。とりあえずすぐに帰る」
ここで押し問答しているくらいなら一刻も早く帰った方がいい。そう判断して、通話を切った。
素早く買い物を済ませ、一目散に自宅へと向かう。