③わたしの執事はときどき俺様
︎✿櫻乃学園に入学します。
あるところに、両親の愛情を一心に受け、とてもとても大切に育てられてきたお嬢様がいました。
結婚して10年間子宝に恵まれず、40歳を目前にようやく誕生した待望の我が子に、両親がものすごく甘やかした結果……。
「宮田! これは、わたしが欲しかったぬいぐるみじゃない〜。今すぐ買い直してきてっ!」
「やだやだ。わたし、勉強なんてしたくない。マナーとかお作法とかどうでもいい。わたしは遊ぶの〜」
幼い頃から勉強嫌いで、自己中心的。
人の言うことは一切聞かない。
お嬢様に必要な礼儀作法やマナーのレッスンもサボってばかり。
そんなお嬢様に手を焼き、今まで彼女の元を去っていった執事は数しれず。
有名財閥の小鳥遊グループ社長のひとり娘・小鳥遊 菫は、とんでもないワガママ娘になっていました。
*****
「菫、ちょっと話があるんじゃが。こっちへ来なさい」
中学卒業を1ヶ月後に控えたある日。
わたしは、小鳥遊グループの会長である祖父・茂人に呼び出された。
「おじい様、何ですか?」
屋敷の広い応接間には、ピリピリとした雰囲気が漂う。
直感的に、何となく嫌な予感がするんだけど……。
「こほん。えー、単刀直入に言う。菫お前、春から櫻乃学園へ通いなさい」
「えっ!? わたしが、あの櫻乃学園に!?」
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