③わたしの執事はときどき俺様
まだ少し時間があるからと、俊くんが食後にカモミールティーを淹れてくれた。
登校初日の緊張が少しでも和らぐようにって。
えーっと……。
お茶を口にする前、わたしは昨日俊くんに注意されたことを思い返す。
まず角砂糖はスプーンの腹に置いて、利き手の反対側でカップの持ち手を持つ。
そして、ゆっくりスプーンをカップに沈めてかき混ぜる。
使用したティースプーンは、カップの手前ではなく後ろのほうへ置く。
それから、紅茶は音をたてずに飲む……だったよね。
「すげぇじゃん、菫様。昨日とは見違えるくらいに、今日はちゃんとできてる」
「ほんとに!?」
「ああ。ちゃんと覚えてて偉いな」
わたしの頭の上に俊くんの大きな手がのり、ポンポンとされた。
わっ……。
「菫様もやればできるじゃん」
「そうかな?」
「ああ。その調子で頑張れよ」
やばい。初めて俊くんに褒められちゃった。
これはけっこう嬉しい……かも。