③わたしの執事はときどき俺様
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「あら、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
先ほどから至るところで、「ごきげんよう」の挨拶が飛び交っている。
わたしは、俊くんと一緒に櫻乃学園へと登校してきた。
今日から授業が始まるのかと、少し憂鬱に思いながらわたしが歩いていると……。
──ドンッ!
すれ違いざまに、誰かと肩がぶつかってしまった。
「あら、肩が当たっちゃったかしら。ごめんあそばせ」
そう言うと、彼女はじっとわたしを見てくる。
というよりも、睨みつけてくると言ったほうが正しいかもしれない。
彼女は、ゆるくウェーブがかった栗色の髪に、頭についた大きな赤いリボンが特徴的だ。
「もしかしてあなたが……あの小鳥遊グループの?」
「はい。小鳥遊 菫と申します」
「そう。あなたが……」
すると、彼女がふっと鼻で笑った。
「今拝見しましたところ、姿勢すらままならないあなたが俊のパートナーとか、ほんとありえませんわ。一体どういう手を使ったのかしら?」
どういう手もなにも、男女のペアはランダムで選ばれるって学園長が言ってたけど。
「菫さん。私、あなただけには絶対に負けませんから」
「はぁ……」
謎の宣言を一方的にされ、名前も知らない彼女は去っていく。
突然、何なのよ。意味不明なんだけど。
「ねぇ、あの人は誰なの?」
わたしは、後ろに控えていた俊くんに尋ねる。