③わたしの執事はときどき俺様


*****


「あら、ごきげんよう」

「ごきげんよう」


先ほどから至るところで、「ごきげんよう」の挨拶が飛び交っている。


わたしは、俊くんと一緒に櫻乃学園へと登校してきた。


今日から授業が始まるのかと、少し憂鬱に思いながらわたしが歩いていると……。


──ドンッ!


すれ違いざまに、誰かと肩がぶつかってしまった。


「あら、肩が当たっちゃったかしら。ごめんあそばせ」

そう言うと、彼女はじっとわたしを見てくる。


というよりも、睨みつけてくると言ったほうが正しいかもしれない。


彼女は、ゆるくウェーブがかった栗色の髪に、頭についた大きな赤いリボンが特徴的だ。


「もしかしてあなたが……あの小鳥遊グループの?」

「はい。小鳥遊 菫と申します」

「そう。あなたが……」


すると、彼女がふっと鼻で笑った。


「今拝見しましたところ、姿勢すらままならないあなたが俊のパートナーとか、ほんとありえませんわ。一体どういう手を使ったのかしら?」


どういう手もなにも、男女のペアはランダムで選ばれるって学園長が言ってたけど。


「菫さん。私、あなただけには絶対に負けませんから」

「はぁ……」


謎の宣言を一方的にされ、名前も知らない彼女は去っていく。


突然、何なのよ。意味不明なんだけど。


「ねぇ、あの人は誰なの?」


わたしは、後ろに控えていた俊くんに尋ねる。


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