③わたしの執事はときどき俺様


──「素晴らしいわ、小鳥遊さん」


わたしが「ずっ」と薄茶の最後の一口を飲み終えると、先生が思わずといった様子で声をあげた。


「お茶のマナーに所作、とても綺麗で完璧でした。さすが小鳥遊グループのご令嬢ね」

「ありがとうございます」




わたしは、親指でお茶碗の飲み口を軽く拭きながら答える。


先生に褒められてしまった。


最初、薄茶と大福が同時に出てきたときは思わず焦ったけれど。


どんな場合でもお茶を飲む前にお菓子を先に頂くのがマナーだと、俊くんが教えてくれたのを思い出して間違えずにすんだ。


綾小路さんの言葉通りにしていたら、間違えて大変なことになっていたかもしれない。


そんな綾小路さんはというと、先生に褒められるわたしを、隣でハンカチを咥えながら悔しそうに見ている。


「小鳥遊さん、これなら近々開催されるお茶会で、2級にランクアップも夢じゃないわ」


わ。先生にそんなふうに言ってもらえて嬉しい。


それから数日、わたしは俊くんと再びお茶会の本番に向けてマナーの特訓をした。


そして茶道の先生の言葉通り、後日櫻乃学園で開催されたお茶会で、わたしは無事に初級から2級にランクアップできたのだった。


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