③わたしの執事はときどき俺様
「よし。傷口はちゃんと流せたみたいだな」
そう言うと俊くんが救急箱を持ってきて、慣れた手つきでわたしの指に薬を塗って絆創膏を貼ってくれた。
ただ俊くんになされるがまま、わたしは一連の流れをポーッと見つめていた。
「これで傷の手当は完了っと。……お嬢様? ぼーっとして大丈夫ですか?」
俊くんに尋ねられ、わたしはハッと我に返る。
「だっ、大丈夫!」
「それなら良かったです。傷もそこまで深くないみたいだし。お嬢様にもしものことがあったら、どうしようかと思いました」
心底ホッとしたような顔をする俊くん。
「あとは俺がやりますから。菫様は、どうぞ休んでてください」
執事モードでそう言うと、俊くんは作業を再開させる。
休んでてください……か。
わたしは、手当してもらった人差し指を見つめる。
俊くんに少しでも良いところ、見せたかったのに。残念だな。