③わたしの執事はときどき俺様
「ねぇ、今何か言った?」
「あ、いえ。何でもないです」
そう言うと、北川くんはわたしの目の前で片膝をついた。
え、いきなりひざまずいて何?!
「改めて、これからよろしくお願い致します。菫お嬢様」
「はっ、はい。こちらこそ」
わたしの手を取り、にこりと微笑む彼に少しキュンとしてしまった。
「では、お部屋に参りましょうか。お荷物お持ちします」
北川くんに案内され、少し歩いて着いたのは……寮のお部屋。
高級ホテルのスイートルームのような、とても広い部屋だ。
今日からわたし、この人とここで一緒に住むの?
慣れない空間に、思わずキョロキョロしてしまう。
「お嬢様、よろしければお茶でも飲んで一息つきませんか? 私がご用意致します」
そう言って北川くんが、紅茶を淹れてくれる。
ティーポットを傾け、カップに紅茶を注ぐ姿も様になっている。
「ありがとう。いただきます」
ふかふかのソファーに腰を下ろしたわたしは、紅茶にミルクと砂糖を入れてかき混ぜると、ティースプーンをカップの前に置き、ズズッと紅茶を飲む。
「はあ、マジかよ……」
北川くん、何をひとりでブツブツ言ってるんだろう。
「あー、ダメだ。今日は初日だから我慢しようと思っていたけど、無理だ。おい、お前」