③わたしの執事はときどき俺様


え、お前!?


この人今、わたしに向かってお前って言った!?


お前なんて今までおじい様以外の人に言われたことのなかったわたしは、目をパチクリさせてしまう。


ましてや、執事という目下のはずの人に言われるなんて。


「お前、マナーが全然なってない。いいか? ティースプーンは、カップの前じゃなくて後ろに置くのが基本だ。そして紅茶は、音を立てて飲まない!」


えっ、え!?


「そもそもまず、お前は姿勢が悪い。歩き方も全然なってないし。お前本当にお嬢様か!?」


北川くんのわたしへの止まらない悪評に、呆気にとられる。


「えーっと、北川くん?」


何か、さっきから急に態度が変わってない?


「それに、紅茶に角砂糖を入れるときは、いったん角砂糖をスプーンに置いてから、利き手の反対側でカップの持ち手を持つ。それからゆっくり、スプーンをカップに沈めてかき混ぜなきゃダメだろ。まったく、小鳥遊グループの令嬢ならちゃんとそうしろよ」


北川くんは、はぁ……と盛大なため息をつく。


「そんなんじゃ、俺の仕える相手がお前とか、恥ずかしすぎて誰にも言えねぇよ」


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