⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚
 成瀬くんはふたり組のうちのひとりに殴られそうになったけれど、それをしゃがんでかわした。もうひとりが成瀬くんに襲いかかろうとする。

 喧嘩のシーンが本当に苦手。

 見ているのが怖くなって、私は目を閉じる。何秒、それとも何分たったのか分からない。

「二條、逃げるぞ!」

 耳元で成瀬くんの声がしたから目を開けた。目の前には必死な顔した成瀬くん。

 見渡すと、根本くんを含めた3人が倒れていた。

「な、何が起こったの? 根本くんを助けないと!」
「いや……。とにかく説明は後だ。とりあえず走るぞ!」
「う、うん。分かった」

 成瀬くんが私の手をぎゅっと、きつく掴んだ。そして、走り出す。

 体制を立て直した男たちが追ってきた。
 私は今、彼に手を引っ張られ、全力で走っている。

 追いかけてくる人たちから逃げている。

 胸の鼓動が高まる。

 このドキドキは、走っているから?
 追われているから?

 それとも、彼が私の手を強く握っているから――?

 
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