✩.*˚again~かつて僕も人間に恋をしていた。
 これが正解なのだろうか。

 自分は今、琉生のためにこの発言をしたのだろうか。
 それとも、琉生と彼女が番になるのが嫌で言ったのか。
 
 本当はもう、自分の気持ちに気がついてしまっている。
 本当は、僕は……彼女に恋をしてしまった。
 出会って間もないのに、彼女に惹かれていった。

「兄貴、なんであんなこと言ったんだよ。清香ちゃんとのこと、反対ばかりしてくるし。兄貴が人間に対して良いイメージ持ってないのは知ってるけどさぁ……」

 琉生は怒り口調だった。
 当然だろう。

「……」

「俺、学祭ラストの日の花火打ち上がった時、清香ちゃんに本気でぶつかって告白するから。俺らのこと、もう邪魔しないで」

 そう言うと琉生はリビングから出ていった。

 琉生にこんなに怒鳴られたのは初めてだった。
 琉生はいつも正直で、真っ直ぐで。
 周りを明るくしたりもする。

 それに比べて自分には何もなくて。

 それでもずっと生きていて。
 なんだか虚しくなってきた。

 何で自分はヴァンパイアなのか。
 僕が人間だったら全てが上手くいっていたかもしれないのに。

 いや、人間じゃなくても琉生だったら。琉生と彼女だったら、ヴァンパイアと人間だけど、上手くいくのかもしれない。

 でも、それは――。


 
 
< 23 / 37 >

この作品をシェア

pagetop