ハーメルンの笛が聴こえるよ…
ショウカが恐れていたことが起きてしまった。

彼女が事件の話を聞いた、3日後のことだった。

フミの弟も行方不明になってしまった。

登校してすぐにその話を聞いた時、ショウカは何も言えなかった。

フミの様子は明らかに憔悴しきっていた。

学校どころではないと判断したショウカは、フミの手を引いて、教師達を振り切り、外に出た。

2人は学校から少し離れたところにある、ファミリーレストランに移動した。

高校の登校時間に営業しているお店は、意外と限られている。

選択肢が多くはなかった。

制服を着たままだったので、店員から不審な目で見られたが、ショウカは気にしなかった。

『…。』

『…。』

席についた2人は何も言わずに、それぞれ注文したデザートにフォークを突き刺した。

しかし、それを口に入れることはなかった。

ショウカはスマートフォンで、ネットニュースを確認した。

最新情報は下記の通りだ。

被害者の数が、大台の100人を超えてしまった。

警察や地域のボランティアによる限界態勢の中、なお被害者が出続けている。

依然として、限界態勢が続いている。

長い沈黙を破り、フミは口を開いた。

『…心配かけてごめんね。』

反射的にショウカも口を開いた。

『フミが謝らないでよ!悪いのは犯人なんだよ?絶対、犯人を許さない。』

『そうだね。わたしも許さない。』

ショウカは何とかして、フミのことを元気にしてあげたいと思った。

本当は、弟を見つけてあげたいところではある。

しかし、友人としてできる範囲はここまでだった。

『ねぇ。フミ。今からさ、ウチの演奏を聴かない?』

『えっ…?』

『悲しいけど。悔しいけど。ウチにできることなんて、そんな無いから。少しでも元気になってもらえそうなこと、しようかなって思って。』

『…ありがと。なら聴きたい。ショウカちゃんの演奏。気も紛れると思うし。』

『分かった。気持ちをこめて演奏するね。移動しよ?』

そう言って2人は、ファミリーレストランを後にした。
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