ハーメルンの笛が聴こえるよ…

ある日の学校。

その平和なはずの昼休み。

昼食を食べ終えたショウカは、フミと一緒にいた。

学内にある中庭のベンチに、２人並んで座っていた。

『ねぇ、これみて？』

ショウカは、フミからスマートフォンの画面を見せられた。

『何これ？』

『この辺で起きている事件なんだって。めちゃくちゃヤバくない？』

フミが見せたスマートフォンの画面には、ネットニュースの記事が映っていた。

その内容は、ショウカ達が住んでいる街の近辺で、数十人の子供達が行方不明となっている事件について書かれていた。

『えっ…？今、こんなこと起きてるの？』

『そうだよ！ショウカちゃん、ニュースとか観ないの？』

『うん…。ウチ、テレビとか観ないし。ネットも時々しか観ない。フミに言われるまで知らなかった。もう一回、見せて？』

『ニュースは観た方がいいよ！はい、どうぞ。』

ショウカはもう一度、フミのスマートフォンの画面を見た。

記事の内容を要約すると下記の通りだ。

事件が起こり始めたのは、１ヶ月程前。

なぜか被害に遭っているのは、子供だけ。

警察は誘拐事件として捜査を開始した。

狙われていると思われる子供の年齢は、５歳〜１０歳。

犯行手口は不明だが、同一犯と思われる。

最初の事件のみ、被害者の親が犯人と疑われたが、後に同じような事件が多発した為、潔白が証明された。

『え、やば。大事件じゃん。フミってたしか、弟いたよね？』

『そうなの。今年で７歳になるから、狙われるかも。』

『絶対守ってあげなよ？』

『もちろんだよ！弟が通ってる小学校では集団下校が始まったし、夕方以降に出歩くのも禁止になったよ。』

『家庭だけじゃなくて、小学校も対策を始めたんだね。』

『うん。近くにある他の小学校でも、始まったって。』

『それでも、被害は止まらないんだ…。』

『うん…。犯行手口が分からないから、警察も防ぎようがないらしくて。一応、見回りを強化するって方針らしいけど…。』

『警察がお手上げなのは、厳しいね…。』

フミは不安そうな表情をしている。

ショウカはフミの弟が心配になった。