すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「野放しでいいわけないだろう! サクラは自分の存在を忘れられているんだぞ! ……それに、俺もサクラとの過去をちゃんと思い出したい」
さっきから握られたままだった手に、ぎゅっと力がこもる。その熱いほどの手の温もりに、胸の奥がきゅうっと苦しくなった。
(カイル……)
すると師匠は「そうだった! 言い忘れてた!」とポンと手を打ち、ニッと笑って私たちを見た。
「良い知らせもあるからさ、そんな睨まないでよ〜」
「それはいったいなんだ? 早く言え」
興奮してるのか、司教様の口調も荒くなっている。すると師匠は立ち上がり、両手を腕に上げた。バーンと効果音が鳴りそうなそのポーズに、三人の視線が集中する。
「口封じの呪いは、今から解呪できま〜す!」
「本当か!」
「良かったな! サクラ!」
(し、師匠〜!)
カイルと私は顔を見合わせ、自然と抱き合い喜んでいた。
(良かった! じゃあこれで話せるんだ! やっぱり師匠は天才だわ!)