すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
そして用意されたお茶に散々文句を言った頃、アンジェラ王女は本題に入った。
「それで、手紙にも書いたとおり、王宮に不法侵入した犯罪者の死体は見つかりましたの? わたくしあの女のことを考えると、怖くて眠れませんわ。しっかりとこの目で処刑が完了したか確認したいのです」
一言一句私の心をイラつかせるけれど、なんとか堪えてじっと耳を澄ましている。すると司教様がまるで子供をなだめるように、ゆっくりと話し始めた。
「いいえ、この教会に誰かが死んだという報告もありませんし、犯罪者の行方もわかりませ――」
「それは嘘ですね」
司教様の言葉にかぶせるように、エリックの声が聞こえてきた。彼の話し方は人を馬鹿にしてるように大げさだ。
「僕は王女の家庭教師ですが、魔術も少しわかるんですよ。ですから彼女の気配を感じることができる。さっきまでこの部屋に犯罪者である、あの女性がいたはずです」
「まあ! エリック! それは本当なの?」
(バレてる! どうすればいいの?)
司教様はなにも答えない。するとその様子に確信をもったのか、エリックは私を匿った教会を責めるようなことを次々と言い始めた。
「聖教会は犯罪者集団」とか「教会を解体させたほうがいい」だの、聞いていられない罵詈雑言に思わず耳を塞ぎたくなったその時だった。