すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「しょうがないな〜。ねえ、伯父さん。ちょっとお披露目には早いけど、紹介しちゃおうよ!」
(し、師匠? 急にどうしたの?)
突然、師匠の明るい声が部屋に響いた。それは聞いている人を巻き込んでしまうような勢いがあり、誰も反応できない。
「ではご紹介しましょう! 私たち聖教会が、先日召喚した聖女です!」
そう言って師匠は、私たちが耳をそばだてている部屋の扉を一気に開けた。
(きゃあ! 転んじゃう!)
急に開いた扉でバランスを崩し転びそうになったところを、カイルが素早い動きで抱きとめる。しかし勢いは止まらず、私はそのままカイルの胸にぶつかった。
「カ、カイル! なぜあなたが、ここにいるのよ! それにその女は犯罪者よ! 婚約者のわたくしがいる前で抱きつくなんて、恥知らずな女ね! 今すぐ離れなさい!」
私たちが抱き合っているところを見て、アンジェラ王女は火が着いたように怒り出した。
もちろん抱きついたのはわざとじゃない。顔から転びそうになったから、思わずカイルのシャツをつかんだだけだ。しかし王女のその言葉を聞いてもなお、カイルは私を離そうとしないどころか、さらに力を込めて抱きしめ始めた。