すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「わ、わたくしは、もう王宮に帰らせていただくわ!」
叫ぶようにそう言うと、王女は足早に扉に向かっていく。しかし王女が部屋を出ようと扉に手をかけた瞬間、今まで黙って様子を見ていた司教様が突然話し始めた。
「おお! それならちょうど良い! そろそろ迎えが来るころでしょうから」
「む、迎え……?」
アンジェラ王女は意味がわからないといった様子だ。確認するようにエリックの顔を見ているけれど、彼も首を横に振っている。
するとカチャリと扉が開き、一人の男性が入ってきた。
「おお、時間どおりですな!」
司教様はニコニコと笑いながら立ち上がると、両手を広げその男性を歓迎した。反対にその人の顔を見た瞬間、アンジェラ王女は顔が真っ青になり、後ずさりし始める。
「ようこそ、アルフレッド殿下」
部屋に入ってきたのは、まぎれもなくこの国の王太子である、アルフレッド殿下だった。