すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「いいんです! 私は真剣にやってたので気づきませんでしたが、知らない人が見たら変ですよね。特にあんな女好きの師匠じゃ、危ない関係だと思われてもしかたがないです!」
(本当に師匠ったら! 後であなたのせいだって、文句言ってやるんだから!)
にっこり笑ってそう言うと、騎士は意外なほど優しい顔で笑った。
「弟子にまでそう思われているとは……ふっ」
「そりゃあ、思いますよ。あの人は異常な女好きです!」
「はは。笑わせないでくれ」
(あの時初めて、彼の顔をじっくり見たんだっけ。またあの笑顔が見たいな……)
青みがかった黒髪。鼻筋がスッととおった端正な顔立ちに、深い藍色の瞳。少しつり上がったキツめの目が、私に笑いかける時だけ、ふにゃりと柔らかくなった。
「改めて自己紹介をさせてくれ。聖騎士のカイル・ラドニーだ」
「初めまして、えっと、聖女のサクラです」
「良い名前だ」
あれから私たちは一緒に浄化の旅をすることになり、少しずつ打ち解けていった。誰よりも真面目で、少々堅物なところがあるくらいのカイルに、私はどんどん惹かれていった。