すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「あはは! 嘘だよカイル! そんなに怒らないでくれ。君の変わりようが凄いから、ついからかいたくなったんだ。それにしてもケリーから聞いてはいたけど、ここまでとはねえ……」


 そう言って殿下は私をチラッと見て、苦笑いしている。後ろにいるケリーさんも大事そうに私を抱きしめて離さない上司を見て、唖然としていた。


(カイルは堅物騎士団長として有名だったもんね。この変化には腹心のケリーさんや殿下が一番驚いてそう……)


 そんな注目を浴びているカイルだけど、当の本人は一向に気にしていないようだ。殿下の話が冗談だとわかると、すぐに私の魔力について師匠を問いつめ始めた。


「そんなことより、ジャレド氏! サクラの魔力は戻ったのですか?」
「え? ああ、そうだったね。戻ってないよ!」


 あっけらかんと話すジャレドに、カイルは困惑して次の言葉が出てこない。


(え? 戻ってない? じゃあさっきの検査板は、師匠がインチキしたってこと?)


 意味がわからず二人で顔を見合わせていると、戸惑っているのはアルフレッド殿下たちも同じだったようだ。

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