すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「それで、サクラにこうやって僕の魔力を入れると〜」
再び師匠に魔力を流してもらったあと、検査板に手を置く。すると、さっきと同じように部屋が虹色に染まった。
「じゃあ、アルにも聖魔力を流してみるよ。アルは王族だから金色だよね」
今度はアルフレッド殿下で試してみるらしい。同じように師匠が殿下に魔力を流し、検査板に手を置く。すると今度は聖魔力を表す虹色ではなく、黄金色の光が部屋中に広がった。
「ほら、このとおり。王族を意味する金色の魔力だけ。虹色にはならないだろう?」
(じゃあ私の体は今、魔力を入れる器があるだけで中身が空っぽってこと? どうすれば体に魔力を満たせるんだろう?)
その答えはすぐに師匠が教えてくれた。私の両肩に手を置くとニコッとほほ笑み、そのまま首筋にひんやりとした手を当てる。
「呪いにかかっていると、聖魔力は体内で作り出せないからね。まずはこの口封じの呪いを解かなきゃ」
(え? じゃあ、これから呪いを解いてくれるの?)
期待を込めた目で見つめると、師匠は「その顔かわいいね〜」と軽口を言い、手に魔力を込めていく。後ろでガタンと音がしたけど、私はその魔力の温かさにそっと目を閉じた。