すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(あれ? でもどんどん熱くなっていく……)


 師匠から伝わる魔力は、最初じんわりとぬるま湯につかっているような温かさだったのに、次第に痛いほどの熱さに変わっていく。


「う……うあ……」
「ごめんね、サクラ。もう少しで終わるから。いい子だから我慢して」


(熱い! 苦しい! 息が、息ができない……!)


 まるで体中に熱風が吹いているみたいだ。鼻で息をすることもできず、私は思わず師匠の腕に手をかける。あまりの苦しさに瞳に溜まった涙が一滴こぼれた。その時だった。


「はい、終わり。サクラ、いい子だったね」


 その言葉と同時に、体から一気に力が抜けた。さっきまでのあの熱い息苦しさはなくなり、私は必死に呼吸を整えている。それでも酸欠状態の私の足元はふらつき、目の前の景色が歪み始めた。


 するとぐらりと後ろに倒れそうになった時、誰かが私の体を受け止めてくれた。


「サクラ……っ!」

< 123 / 225 >

この作品をシェア

pagetop