すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 最初は静かに聞いていた殿下も、身勝手な理由で私から聖女の力を奪ったことや瘴気で苦しんでいる国民への無関心さを話すと、ギリリと音が聞こえるほど歯を食いしばっていた。


「……そうだったのですか。しかしあの愚妹がこのような高度な魔術を使えるとは思えない。なにせ遊ぶことしか考えていないのです。そのせいで何人も家庭教師が変わってしまって、結局一時的にエリックが話し相手として収まったのだが……そうだジャレド! エリックはおまえの紹介だっただろう? 彼は魔術を使えるんじゃないか?」


(え! エリックさんは師匠の紹介で家庭教師になったの?)


 殿下の言葉でみんなの視線が一気に師匠に集まる。それなのにジャレドはぽかんと口を開き、なんのことだかわからないらしい。


「え〜? そうだっけ?」
「そうだっけじゃないぞ。ジャレドのサインがある紹介状を持っていたから採用したのだ。まさか知らない者に紹介状を書いたのか?」


(あの面倒くさがりな師匠が紹介状を書いたなんて、それだけでも親しい関係に思えるけど……)


 しかし師匠はそれを聞いても、まったく思い出せないらしい。「う〜ん。でもたしかにあの子はどこかで見た気がするな〜」なんてことをブツブツ言っては、カイルやアルフレッド様をイラつかせている。
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