すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「私も一度だけですが、お茶をお出ししたので覚えております。たしか二年ほど前に連れていたかと。ジャレド様が弟子を取るなんて珍しいと思ったのでよく覚えています」
「え〜? 本当?」
どう考えても師匠よりもアメリさんたちのほうが信用できる。その考えはみんな一緒だったようで、冷たい視線がジャレドに注がれ始めた。その時だった。いきなり師匠が立ち上がり、ポンと手を打った。
「あ! もしかしてあいつか! 思い出したよ! たしかに仕事場に入れてた気がする!」
「もう! 師匠ったら、なんで忘れてるんですか!」
「だって、あいつ女の子じゃないし……」
「し、師匠〜!」
ジャレドのその言い訳に、実の伯父である司教様ですら嫌悪感丸出しの顔で見ている。他の人たちの視線も同様に冷たい。
それにしても師匠の女性好きには呆れるけど、彼が教えたならエリックは凄腕の魔術師だろう。さっきは頼りない感じだったけど私に二つも呪いをかけて、なおかつ日本に送り返しているのだ。
(もしかしたらまた何か仕掛けてくるかも……)
考えれば考えるほど不安になってくる。すると皆に責められるような視線を浴びていた師匠が口をへの字に曲げ、不満そうな顔をし始めた。