すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「もう〜そんな目で俺を見ないでよ! 大事なことも思い出したんだから褒めてほしいね」
「大事なことですか?」
「そう! 君にかけた呪いの魔術は天才が作ったものだって言っただろう? だけどあれは違ったよ。あの魔術は僕が作ったやつだった! やっぱり天才は僕一人だけだったね!」


 師匠はまわりの唖然とした顔にも気づかず、むしろ誇らしそうに胸を張って話を続けている。


「あの頃は君を召喚するための魔法陣を作ってたんだけど、他にもいろいろ思いついたんだ! その時に『相手の魔力を根こそぎ奪う魔術』や『喋れなくする魔術』を思いついたんだよ。罪人用にちょうどいいだろ? アルに恩を売るには最適だし。でもさ〜伯父さんに話したら即刻捨てろって言われちゃって。それでその魔法陣を書いた羊皮紙は捨てたと思ったんだけど……。そうだそうだ! その時にエリックに『これ捨てて〜伯父さんに怒られちゃった』て言って渡したんだった!」

「ジャレド!」
「師匠!」
「な、なに? なんでそんなに怒るんだよ?」


 本当に師匠は「馬鹿と天才は紙一重」というやつだ。そんな危ない魔術を自分の手で管理せず、弟子とはいえ簡単に手渡すなんて……!


 それでも今は師匠にお説教している時間はない。私はみんなのガックリとうなだれた顔を横目に、首を傾げているジャレドを問い詰め始めた。
< 133 / 225 >

この作品をシェア

pagetop