すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「それよりも、サクラの魔力はもう戻らないのですか?」
「戻るよ。時間はかかりそうだけど」
「え! 本当ですか!」
嬉しくて思わずカイルと顔を見合わせた。けれど師匠は眉間にシワを寄せ「でもね〜」と話を続ける。
「少しずつだよ。今の君の魔力は枯井戸みたいなものだから。何回か君のなかに聖魔力を呼び水のように入れていけば、もとに戻ると思う。でも呪われてた期間が長いから、定期的に誰かの聖魔力を入れてもらわないと――」
「その役目は俺がします!」
すぐさまカイルが手を挙げた。真っ直ぐな目で師匠を見つめ周囲の人たちも「でしょうね」という顔で見ていて少し気恥ずかしい。師匠だけが「良かったね〜」とヘラヘラ笑っている。
「じゃあサクラの魔力回復はそれでいいとして、あともう一つの忘却の呪いを解くのは簡単だよ。国の結界を壊しちゃえば術式も崩れるから、みんなサクラを思い出す。王太子のアルが許可を出せば一気に解決!」
その言葉に皆がアルフレッド殿下のほうを振り返った。私の肩にあるカイルの手にもグッと力が入る。しかしそんな期待を一心に浴びている殿下は、しばしうつむいた後首を横に振った。
「……申し訳ないが、国の結界を壊す許可は出せない」
(まあ、そうだよね……)
予想していた返事だったが、唯一カイルだけが殿下に対して声を荒げた。