すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「サクラさん。私も王宮に保管してある魔術書を調べてみます。ジャレド手伝ってくれよ」
「そうだな。教会にも残されているかもしれない。そちらも探してみよう。ジャレドしっかりやるんだぞ」
「え〜」
殿下と司教様に突然仕事を命じられた師匠は、あからさまに面倒そうな顔をしている。その様子にみんなが注意しようとすると、あわてたジャレドは「待って待って!」と遮って話し始めた。
「忘却の呪いは、サクラが頑張ればなんとかなるかも!」
「えっ? 私ですか?」
驚いて師匠のほうを振り返ると「そうだそうだ! この手があったな〜」と上機嫌だ。なにか良い方法を思いついたみたいで、楽しそうに説明し始める。
「アルたちが言う瘴気が増えてる国境近くの場所って、ケセラの町だろう? その場所はサクラが唯一塞がなかった結界の穴がある場所だ。サクラはそれを修復する前に、エリックによって元の世界に戻されてる」
たしかにケセラの町は私が最後に行った場所だ。そこでカイルにプロポーズしてもらったからよく覚えている。
「だからちょうどいいよ。サクラの聖魔力の回復を待って、君がこの国の結界を修復すればいい。その時に解呪の魔法陣を同時に発動させれば、君自身が結界の呪いを解けるはずだ」
「私が呪いを解く……?」
(つまり私の魔力が回復して瘴気を浄化できるようになったら、解呪の魔法陣の上に立って魔術を発動させればいいのかな?)
瘴気を聖女の力で浄化すると、「聖気」になって結界に届く。忘却の呪いはその「聖気」を利用して結界ごと魔術をかけたのだから、逆をすればいいってことか。