すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「それなら瘴気もサクラさんの記憶の問題も、一緒に解決しそうだね」
「そうそう。サクラの世界で言う『イッセキニチョー』だね」
パチンと指を鳴らしジャレドが私にウインクをした。私がよく「こうすれば一石二鳥ですよ!」と言ってたからか、師匠はその意味を知ると面白がって使うようになったんだよね。皆がお辞儀を真似したみたいに、師匠も日本語の言葉を使ってたのは楽しい思い出だ。
「ふふ。師匠覚えてたんですか。その言葉」
「よく言ってたからね。僕この言葉大好きだよ。お得って感じがする!」
「私もです」
(やっぱりこうやって昔の話ができるのは嬉しいな。頑張って魔力を溜めて、カイルや皆とも話をしたいから頑張ろう!)
思いの外早く解決しそうで私は嬉しくてカイルの顔を見上げる。でもなぜか彼の顔は淋しそうで、声をかけるのをためらってしまった。
(どうしたんだろう? 疲れてるのかな?)
私が隣でじっと見つめていてもカイルは視線に気づかない。なにか考え込んでいるようだから、そっとしておこうかな。そう思った私は再び師匠の話に耳を傾けた。
「魔法陣はすぐ作れるから、それまではいっぱいカイルに聖魔力をもらっておいて――ケホッゲホッ」
話の途中で急に師匠が咳き込んだことで、私の視線がカイルから師匠に移った。しかも顔色も悪くて汗をかいている。私はあわててジャレドの元に駆け寄った。