すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「シュリの花ですね! もちろんですとも! すぐに作ってお渡しします! うわあ……嬉しいな。サクラ様は本当に私たちと仲良くしてくれていたのですね」
二人は顔を見合わせ、本当に幸せそうにほほ笑んでいる。私もその姿を見ているだけで、まるで昔に戻ったみたいで嬉しくなってきた。
(話せるって最高! さすがに二人の恋心については聞けないけど、記憶が戻ったら根掘り葉掘り聞いちゃうからね!)
含み笑いをしながら隣に座るカイルを見ると、また彼の表情は落ち込んでいるように見えた。
「カイル? さっきからどうしたの? 体調が悪いの?」
そっと服を引っ張り様子をうかがうと、カイルは心配する私を苦笑いして見つめ返した。
「……いや、そんなことはない。ただ今日はいろいろあったから情報を整理するのが大変だったんだ。そうだ、サクラ。食べ終わったようだから少し散歩しないか?」
「うん! 行きたい!」
(そうだよね。混乱してるのは私だけじゃない。いきなり犯罪者だと思ってた私が聖女で、しかも過去に一緒に過ごしてたなんて聞いたら驚いて当たり前だよ)
「中庭にでも行こうか。今の時期なら花が綺麗だと思う」
「そうだね。ちょっと外の空気を吸いたいし」