すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
俺が昔のサクラを覚えてないのも関係があるのかもしれない。一番見ていてつらいのは、やはりジャレドだ。二人にしかわからない親密さが垣間見えると、どうしても自分の不甲斐なさから彼をやっかんでしまう。
(さっきも二人にしかわからない言葉で笑い合ってて嫉妬で見ていられなかった……なさけない)
もちろん彼らに恋愛感情があるようには見えないが、二人には家族のような親愛の情で深く結ばれている気配があるのだ。特にジャレドはサクラを気に入っているのだろう。ヘラヘラと笑っているけれど、彼は自分の命を削ってでも呪いを解いたのだから。
飄々とした態度で始まった、口封じの呪いの解呪。なんの説明もなく始まったが、ジャレドは今までにない真剣な表情でサクラの体から呪いを解こうと必死になっていた。
最初はサクラがジャレドに首を絞められているように見えて驚いたが、すぐに彼の顔からは汗が吹き出しとんでもないことが始まったことを理解した。そのままサクラが苦しみもがく姿に爪が食い込むほど拳を握り、なにもできない悔しさに歯を食いしばる。
(見ているだけしかできないなんて……! それにサクラは息ができないのじゃないか? クソ! なんでサクラがこんな目に!)
皆が固唾を呑んで見守りようやく解呪が終わった瞬間、二人は同時にふらつき倒れた。俺がサクラを司教様がジャレドを受け止める。息苦しかったのだろう。サクラの顔は真っ赤になって汗だくだった。
それでも俺の瞳を見つめ、絞り出すように口を開いた。