すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「だが聖女に関しての記述がないのが不思議だ。教会側にもなにかサクラさんの召喚に関して書き残していなかったのだろうか?」
「きっと書類は残ってると思うよ〜」
「え? じゃあなぜ?」
「みんなが呪われてるから見えてないだけじゃないかな?」
そう言うとジャレドは紙にサラサラとなにかを書いた。しかしペン先にインクがついていないのか、なにも見えない。いやなにかあるのはわかるのだが、判別できないのだ。
「サクラという名の聖女を召喚したって書いたけど、これ読める?」
「……いや」
「ふ〜ん。言葉で言うのは理解できるけど、紙に書かれるとダメみたいだね。これは研究しがいがある……」
魔術師としての血が騒ぐのか、ジャレドはニヤリと笑っている。
「それなら王宮の書類も見えないだろうな」
「だろうね。でもまだサクラのことは秘密にしておいて。聖女が現れたとなったら大騒ぎだよ。前回はあっという間に国中に聖女が現れたって広がって、教会に瘴気で困ってる人がたくさん押しかけたんだから!」
この様子じゃ彼まで駆り出されるほど大変な状況になったのだろう。昔のことを思い出したのか、ジャレドはブルッと震えている。