すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 その答えにズキンと胸の奥が痛む。


 忘れもしない。初めて目が会った時の彼女の嬉しそうな顔。俺に会えた喜びが全身からあふれていた。


 しかしそこからサクラの表情は困惑し、そして絶望へと変わった。変えたのは俺だ。もし以前の彼女が俺のことを愛してくれていたなら、恋人の手によって崖から突き落とされると知った時どれだけつらかっただろう。


 いや、その前に俺は彼女に剣を突きつけ傷つけた。たとえ俺がした行為をサクラが許してくれても、気持ちが離れてしまっていてもおかしくない。


(なぜ俺は覚えていられなかったんだ……! 後悔してもしきれない……)


 それでも心の奥にある「サクラを幸せにしたい」「誰にも渡したくない」という想いを手放すことはできなかった。


「あ〜もう! カイル暗いよ! サクラはね、自分の好きな人には笑っていてほしいんだよ。だからそんな罪悪感まみれの顔でいるより、冷たくしたぶん甘やかしてあげればいい!」


 そう言うとジャレドはフンと鼻で笑った。彼らしい俺への助言だ。


「なんだジャレド。おまえも人の気持ちがわかるじゃないか」


 からかうような司教様の言葉に、彼はニヤリと笑って振り返る。
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