すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「いや、ここは大丈夫だ。しかし少し瘴気が風にのってきているな。ジャレド氏も起きたことだし、食事を終えたら馬車の進みを早めよう」
「本当だ。まだ地上には降りてないけど、上のほうに黒いのが溜まってる……。私、みんなに伝えてくるね」


 瘴気が見えるのは、私とカイルそして師匠だ。さっきの話をすると師匠も嫌な顔をしてパンを飲み込み、さっさと馬車の中に移動した。


「ブルーノとアメリは、布で口をふさいでおいて〜」


 瘴気に耐性のない私たちと違い、二人はあの黒いモヤモヤを吸い込むと体に良くない。いきなり倒れることはないけど、濃度が濃かったら何日も高熱を出してしまう。


(まだあれくらいじゃ大事には至らないけど、結界に穴が開いているケセラの町は大変なことになってそう……)


 魔力を満タンにして結界の穴を修復しなきゃ。久しぶりだから上手くいくかわからないけど、きっと困ってる人がいっぱいいるはず。私はぎゅっと手を握りしめ馬車に乗り込んだ。


 スピードアップした馬車はかなり揺れたが、あっという間に今夜の目的地に着いたようだ。


「さあ、カレブの町に着いたぞ。風向きのせいかこの町には瘴気がほとんど無いみたいだな」


 馬車置き場から町を眺めると、たしかに空は澄み切っていて空気も綺麗だ。私はホッとしてアメリさんたちに報告し、みんなで荷物を持って町の入り口に入っていった。

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