すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

「瘴気がなくて良かったですね。今日はゆっくり過ごして明日に備えましょう」
「うん!」


 すると町に入ったとたん、たくさんの人たちがワーワーと騒いでいるのが見えた。喧嘩をしているわけじゃないけど、みんなものすごく興奮してお祭り騒ぎだ。


「なにかあったのかな?」
「サクラ、ちょっと下がっててくれ」


 私たちはカイルの誘導で、急いで道の端に駆け寄った。この辺りなら人もそんなにいないから安心だ。そう思ってカイルの背中からチラリと様子をうかがうと、大きな声で叫ぶ一人の男が群衆から飛び出してきた。


「みんな! お祝いだ! アンジェラ王女が、隣国サエラに嫁ぐことが決定したぞ!」


 その男の言葉に、思わず皆で顔を見合わせる。


(アルフレッド殿下が言っていたあの縁談が本当に成立したの? アンジェラ王女が了承したなんて信じられないけど……)


 カイルの名を叫ぶ王女の姿が頭に浮かぶと、なおさら信じられない。数ヶ月経ったならまだしも昨日の出来事だ。



(自暴自棄になったアンジェラ王女がなにかしでかすんじゃ……それにいつも王女の側にいたエリックはどうしてるんだろう)


 私はそんな不安な気持ちを抱きながら、目の前で大喜びする町の人たちをじっと見ていた。
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