すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

 王女は自分の願いが陛下に断られるとは思ってもみなかったのだろう。信じられないものを見るような目で、一歩また一歩と後ずさりしている。


「諦めろ、アンジェラ。サエラ国では第三王子と婚姻を結べる。我が国オズマンドよりは厳しい気候だが、王族でいられるのだ。アルフレッドに感謝しなさい」
「そ、そんな……! 嫌よ! 絶対にわたくしはカイル以外とは結婚しないわ! カイルがあの女を愛してるはずないもの! わたくしはそんな馬鹿げたこと信じないわ!」


(まあ、王女が言っていることもわからないではない。あの堅物で真面目が服を着たようなカイル団長が、一人の女性のために命をかけ、しかも体にベタベタとさわっているのだ。俺もこの目で見ていなかったら信じられなかっただろう)


 数日前、突然王宮に現れたサクラ様。最初は何者かに操られた者か、それとも俺たちを欺こうとしている魔術師かと思っていたが。まさか聖女様だったとは。


 しかも一年前、俺も一緒に瘴気を浄化する旅をしていたという。カイル団長も一緒だったことから、そうとうこの国で優遇されていたのだろう。しかもあの変人と噂の天才魔術師ジャレドが、自分の命を削ってでも助けた女性。
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