すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 よく考えてみれば自分もそして殿下や司教様も、初めて会ったはずのサクラ様に対して親身になっていた気がする。団長ほどではないが彼女に好意的な気持ちがあるのだ。彼女の言うことは本当だと信じられるし、最初に団長が彼女を救うと聞いた時も受け入れることができた。


(俺も早く思い出したい……)


 俺には聖女の浄化がどういうものか記憶がない。しかしジャレドいわく浄化は一度体内に瘴気を入れるため、体にかなりの負担があるらしい。


 ――かわいそうに。浄化の時だって高熱を出しながら、この国のために頑張ったのにね。


 ジャレドが言った言葉が忘れられない。きっと俺も一緒に旅をしたから、サクラ様の頑張りを見ていたはずだ。


 それなのに目の前の王女はどれだけの国民が瘴気で苦しんでいるかも見ようとせず、今も聖女の大切さをわかっていない発言を繰り返している。


「いやよ! 聖女がなんだっていうの? そうだわ! そんなに大事だって言うなら、いっそあの女を隣国に嫁がせれば――」
「いいかげんにしろ!」


 身勝手な王女の言葉に、とうとう殿下が声を荒げ立ち上がった。
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