すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「話にならない。陛下、アンジェラの婚姻の手続きは進めますがよろしいですよね」
もう王座はアルフレッド殿下に譲られたようなものだ。陛下が弱々しい声で肯定すると、殿下はくるりと二人に背を向け歩きだした。
「お待ちください、お兄様! わたくしは絶対に嫁ぎません!」
背後から王女の叫び声が聞こえるが、殿下は振り返る素振りすらしない。きっと頭は次の仕事のことだけで、アンジェラ様の言葉は耳に入ってこないのだろう。執務室に着いたとたん、今度は別の問題に頭を悩ませている。
「ケリー、それで聖女サクラに呪いをかけたエリックは、今どうしている?」
「軟禁状態にしておりますが、私室からは魔法陣などは出てきておりません。もう少し調べるつもりですが、こうなることを予測してどこかに隠しているか、それとももう全て証拠隠滅をしたのか……」