すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
(あれ? ハンカチにまで血が滲んでる……)
傷がついた日から時間が経っているのに血が止まらないのはおかしい。しかも巻いたハンカチが滲むほど出ているなんて。不思議に思っているとジャレドは「ほら〜やっぱり〜」と言って、ケリーさんの腕を取った。
「これさ、盗聴の魔術だろう? 自分でやったんじゃないなら、誰に付けられたの?」
「え? 盗聴? 魔術? 俺は魔術は使えませんし、傷をつけたのはたぶんアンジェラ王女かと思いますが……」
「ジャレド氏、ケリーの腕に魔術がかかっているのか?」
「ん? みんな見えないの? 今まさに魔法陣が浮かんでるじゃないか」
師匠はそう言うけれど魔法陣はどこにも見えない。みんなも同じようで首を振っている。それに魔法陣は発動した瞬間だけ見えてすぐに消えてしまうはず。
(師匠だけに魔法陣が見えている盗聴の魔術……? ということはもしかして!)
私はケリーさんの腕を不思議そうに見ている師匠を強引に振り向かせた。