すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「いったん今朝までいたカレブの町に戻ろう。女の子二人までなら僕が転移で移動できる。カイルは自分で、ブルーノは悪いが馬車で戻ってきてほしい」
「わかった。ケリーはこのことを殿下に報告しろ。他にも傷が治らない者がいたら――」
「見つけたわ」
耳元でぞわりとする女の声が聞こえた。すると次の瞬間私の足元が光り、地面に魔法陣が浮かび上がる。師匠が作ったものではない。色が違う。この金色の魔力は王族の証だ。
「きゃあ!」
「サクラ!」
逃げようとする間もなく私はアンジェラ王女に腕をつかまれ、そのまま目の前の景色がぐにゃりと曲がり始めた。ほんの少し誰かの指先がふれた気がしたが、それが届くことはなかった。
(転移してる! なぜアンジェラ王女が魔術を?)
一瞬にして目の前の景色が変わり、気づくと私は見知らぬ場所に立っていた。小高い丘のようなところで、遠くには町が見える。