すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(ここ、どこ?)

「大人しくしてなさい!」
「きゃあ!」


 アンジェラ王女が乱暴に背中を突き飛ばし、私は前のめりになって地面に突っ伏した。倒れた先にあったのは、魔法陣が描かれてある布。私の魔力を吸ったのか、ぼんやりと光り始めている。


(もしかして日本に帰される? 逃げなきゃ!)


 しかし急いで立ち上がろうとした瞬間、カクンと膝から力が抜けた。まるで大きな掃除機で吸われているみたいに体が魔法陣に引っ張られ、身動きができない。


(これは……魔力を抜かれてる……?)


 体全体がしびれ目眩で頭がクラクラする。私は指先ひとつ動かせずに、ただ息を荒げるしかなかった。



「アンジェラ王女、無事成功したのですね」
「フン! こんなの簡単だったわ!」


 エリックだ。やはりこの魔法陣もアンジェラ王女の転移術も、師匠が捨てたものなのだろう。彼は魔力を抜かれ続ける私を見てせせら笑っている。


「なにが弟子だ。魔術も使えないくせに、ジャレドの横で偉そうにしやがって」


 憎しみのこもった声でそう吐き捨てると、エリックは私の前に座り込んだ。気づかなかったけど私は彼の恨みを買っていたらしい。私を睨みつけぶつぶつと自分がどんなに優れた人間か、ジャレドに認められるのは俺だと呟いていた。
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