すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「カイル! 逃げて!」
「ぐっ!」
私の叫びもむなしく足元の魔法陣は一瞬で発動し、カイルはうめき声をあげ倒れた。倒れる寸前カイルは私の体を突き飛ばし、ケセラの町のほうを指差す。
「サ、クラ……逃げ……ろ」
「カイル! そんな……! もしかして魔力を吸われたの?」
「……ああ……やら、れた」
さっきエリックが言っていた。魔力を一気に吸い上げると成人男性でも気絶する魔法陣だって。かなりの魔力を使ったと言いかけてたカイルは、ほとんど魔力がない状態だったのだろう。
(ただでさえ魔力が少ないのに、これ以上吸われたらカイルが死んでしまう!)
私は落ちていたナイフを拾い、足首の縄を切り立ち上がった。体に力が入らずふらつくけど、そんなことを言ってる場合じゃない。
(魔法陣からカイルを出さなきゃ! ずっと吸われっぱなしになってしまう!)
私はありったけの力を出し、カイルの体を引っ張り始めた。一度発動してしまうと紙は燃え、魔法陣は地面に焼き付いてしまう。もっと私が早くエリックの動きに気づいていれば、こんなことにならなかったのに!