すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「アンジェラ王女! カイルに魔力を流してください! 全部吸い取られて死にそうなんです!」
王女だってカイルを愛しているはずだ。すぐに協力してくれるはず。それなのにアンジェラ王女は一歩後ろに下がり、首を横に振った。
「無理よ! 私だって転移の魔術で減ってるもの!」
「そんな! このままじゃカイルが死んじゃうわ! そうだわ! アルフレッド殿下に連絡する手段は持っていないのですか?」
カイルは旅の途中でも魔術で手紙を受け取っていた。私は使ったことがないけれど、アメリさんだってその方法を使っていた。きっとアンジェラ王女だって――!
しかしその希望も、王女は当然のような表情で打ち砕いだ。
「いやよ! こんなことになってるなんて知らせたら、お兄様は怒って私を一生塔に閉じ込めるわ! もうカイルなんていらない!」
子供のようにそう叫ぶと、アンジェラ王女は森の奥に逃げていった。
(信じられない……あんなにカイルに執着しておきながら、結局は自分が一番大事だっていうの?)
師匠も魔法陣の復元で魔力を使ってしまって、ここには来れない。私も魔力を全部吸い取られてしまった。もうカイルを救う手段が思いつかない……。