すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「カイル、頑張って……!」
流した魔力がカイルの体を満たしていき、やがて頭の天辺から足の指先まで届いた。彼の体は薄く虹色に光り始め、みるみるうちに顔色が良くなっていく。荒かった呼吸も少しずつ穏やかになっていった。
(さっきまであんなに青白かったのに……良かった!)
「サ、サクラ……」
「カイル! ラクになった?」
カイルが薄く目を開け私を見つめている。汗をぐっしょりかいてまだつらそうなのに、彼はよろよろと起き上がった。あわてて背中を支え近くの木に寄りかからせると、カイルはふうっと大きく息を吐きほほ笑んだ。
「……かなり良くなった。ありがとう。サクラのおかげだ」
「それは違うよ! カイルのおかげなの。カイルが持っていたネックレスに私の魔力が入ってて……」
「サクラの魔力? あの小瓶に入っていたのか? いや、その前にサクラ! さっきからずっと君の魔力が体からあふれていいるが、大丈夫なのか?」
「えっ? ああ! 本当だ! なにこれ!」
あわてて自分の体を見てみると、魔力が勝手にあふれ出していた。私の体全体が虹色にキラキラと光り、浄化もしていないのに「聖気」になって空に飛んでいっている。