すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「わああ! これどうしたらいいの?」
「止めることはできるか? サクラは魔力がなくても平気みたいだが、これは異常すぎる」
「わかった! やってみるね!」
たしかに体調が悪くなることはないけど、ここまで魔力があふれると何か起こりそうで怖い。
(でも魔力ってどうやって止めるの? やったことないんだけど……)
しかたなく私は水道の栓を締めるイメージで、あふれる魔力を抑え込もうとした。
「少し収まってきたぞ」
「でも、カイル。これ、ちょっと無理かも……」
魔力を止めていると、まるで熱いお風呂に入り続けているみたいにつらい。汗が一気に吹き出し頭がクラクラしてくる。案の定、提案したカイルでさえ止め始めた。
「サクラ! 顔が真っ赤だ。一度魔力を出したほうがいい!」
「ううう……そうする……」
私は丸く縮こまっていた体を伸ばし立ち上がった。そして両手を上げ、せき止めていた魔力を一気に解放する。
「ぷはっ!」
それは一瞬のこと過ぎて、最初なにが起こったのかわからなかった。聖気になった魔力が竜巻のようにグルグルと回り始め、そして一気に空に飛んでいく。
「あ、ヤバい!」
「これは……!」
大きな塊になった虹色の玉がまるで彗星のように線を描き、一直線に結界に向かって飛んでいく。キラキラと光の粒を撒き散らし登っていくその光景を、私とカイルはなすすべもなく呆然と見ていた。