すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「おいおいブルーノ、君も教会の者だろう? それならさっき僕がサクラに伝えたことが嘘だって見抜いてくれなきゃ」
「え……? 嘘だったのですか?」
ジャレドは湯気が立つお茶をふうふうと冷ましながら、ブルーノを見上げる。
「そうだよ〜嘘も嘘。サクラの聖魔力を利用した呪いをかけたんだよ? しかも二人は自分たちの記憶を留めておくために、魔法陣を書くインクに血を混ぜていた」
「そ、それでどうなったのですか?」
ブルーノの急かすような声に、ジャレドの目がほんの少し光った。
「聖魔力というのは神から授かったものだ。どういうわけか僕ももらっちゃったけど。その聖なるものを悪用した二人はね、今頃いっそ殺してくれってほどつらい目にあってるよ」
ゴクリとブルーノが喉を鳴らす。静まり返った部屋で、ジャレドだけが優雅にお茶を飲んでいた。
「二人は今、サクラが味わった口封じの呪いの痛みや、処刑される死の恐怖を体験している。しかも繰り返しね。あまりの苦しさに気絶して、また起きたら痛みが襲う。そうやって今もきっと、のたうち回って苦しんでいるよ」
その光景は、昨夜俺が見たものだった。アルフレッド様の護衛として二人の様子を見に行ったのだが、彼らはずっとサクラやジャレド、そして目の前にいる殿下への恨み言を叫んでいた。