すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「てっきりね、僕は二人に魔術がかかってるんだと思ったんだよ。でも違った。魔術の痕跡がないんだ。陛下に解呪してくれと頼まれたけど無理。俺にはできないんだよね。できるとしたら神様だけなんだよ」


 その陛下も明日には退位される。明日からは王族の領地でひっそりと暮らされるだろう。王女やエリックがサクラにしたことは国民には知らされていないが、この国の要人たちは知っている。きっと噂として貴族あたりまでは知っているのだろう。


 そのせいか王宮はもちろん、国中が殿下の即位でお祭り状態だ。その際にサクラも大聖女としてパレードをやろうと殿下が言い出したが、彼女は「絶対に嫌です!」と断っていた。


「僕たちが二度目の忘却の呪いにかからなかったのも、神様の仕業かもね」


 あの後サクラから二度目の忘却の呪いの話を聞いた時の、皆の怒りは凄まじいものだった。一人連れ去られたあの寂しい森で絶望に陥った彼女の気持ちを考えると、俺は王女たちが神の怒りを買って当然だと思っている。


「まあ、神も無慈悲じゃないから、二人が本当に反省したら治るかもしれないけど〜」
「それは難しいだろう」
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