すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 反省どころか未だに自分たちがなにをしたのか理解すらしていないのだ。神の許しが訪れるとはとうてい思えない。俺がきっぱりとそう言うと、ジャレドはニヤリと笑って「だよね〜」と言ってお茶を飲んだ。


「おや? カイルはそろそろサクラの元に行ったら? きっと今頃サクラと少しでも話したい人が来て困っている頃だよ〜」
「しまった! それでは失礼する!」


 二人がニヤニヤした顔で俺を見送っているが、いつものことなので気にもとめない。俺とサクラの仲が良いということが知れ渡っているほうが好都合なのだ。案の定サクラが衣装合わせをしているという部屋に行くと、アルフレッド殿下が彼女に会いに来ていた。


「あっ! カイル!」
「殿下! 俺より先に彼女のドレス姿を見ないでください!」
「え……一番先に言う言葉がそれかい? 非番とはいえひどいな」


 サクラの隣にいるアルフレッド殿下を見るだけで、胸がキリキリと痛む。王宮にいる時のサクラは、貴族女性が着るような豪華なドレスを着ているので、俺以外の男と並ぶ姿は心臓に悪い。


(ぐっ……! 二人が並ぶとなんて絵になるんだ。しかも顔を見合わせ笑い合って仲睦まじく見える!)


「ほら来ただろう? カイルは君なしでは生きられない体だからね」
「もう、変な言い方しないでくださいよ。カイルはそんな人じゃ――」
「いや、そういう人でいい。だから殿下、サクラの隣にいないでください」
「カイル、性格変わってないか?」
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