すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「いや、ケリーの言うとおりだな。不思議なんだが、昨日彼女が現れてからというもの、俺の頭は変なんだ」


 俺が昨日から続く彼女への好意や頭に浮かぶ言葉をケリーに話すと、彼もまた黙り込んでしまった。しばし二人で静まり返った部屋で考え込んでいると、ケリーが何か思いついたように口を開いた。


「……もしかしたら、団長の聖魔力に関係しているのかもしれませんね」
「聖魔力?」
「はい。通常、聖魔力をもった者は、精神関与の魔術は効きません。聖なる力が守っているからです。しかし彼女が現れてから、団長の頭には不思議な声が聞こえている……」
「ああ、しかも彼女に関することだけだ」


 ケリーはそれを聞くと納得した顔で「ふむ。それならやはり……」とうなずいている。


「今牢屋にいる彼女は、聖魔力に似た力を持った者。もしくは聖魔力が未覚醒であるのかもしれません。もしかしたら、お互いの魔力が共鳴しているのではないでしょうか?」
「彼女の聖魔力と共鳴……」


 たしかに彼女の心に「共鳴」していると言われると、一番しっくりくる。


 彼女が悲しめば、俺も苦しくなってくる。反対に彼女の笑顔で、俺の心も癒やされるのだ。
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