すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(はあ……かわいい)


 どうやら俺の心のタガが外れてしまったようだ。今まで押し込めていたぶん、一気に目の前の彼女に対しての気持ちがあふれてくる。


「怖かっただろう。もう大丈夫だ」


 彼女の体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。するとやっぱり状況がわからないみたいで、腕の中で首をかしげている。その動きすらもかわいくて、ますます彼女を抱きしめる力が強くなる。


「なにかの理由で言葉が話せないけど、俺が言っていることは理解できるんだよな?」


 よく咳き込むところをみると、おそらく喉に怪我をしているのだろう。そう言うと、彼女はコクコクとうなずいた。


「それなら、今日起こったことを説明させてほしい」


 俺は彼女の容疑が決まっていないまま強引に処刑されそうだったこと。それに俺は反対していること。処刑を止められなかったため、転移で一緒に逃げたことを伝えた。

< 53 / 225 >

この作品をシェア

pagetop