【コミカライズ配信中】すべてを奪われた聖女~二度目の召喚で待っていたのは処刑でした~
「君を助けたかった。ただ、それだけだ。これからは、俺が君を守る。だからもう、泣かなくていい」
返事を聞いた彼女は無表情だ。しかし、みるみるうちに大きな瞳に涙がたまり、あふれ始める。止まらない涙をそっと指で拭うと、彼女はクシャリと顔を歪め声を出して泣き始めた。
「ああ、ああ……ううう……ゲホッゲホッ」
「そうか、泣くのも苦しいのか」
かわいそうに。それなら昨夜は、どのくらいの痛みを伴って泣いたのだろう。いや痛くてもいいから、泣きたかったのか。そのくらい悲しく淋しい夜を過ごしたのだ。
こんなか弱い体で。彼女が着ている服はもうドロドロだ。髪もボサボサで寝ていないのだろう。目の下のクマもクッキリと出ていた。
――彼女は俺が命をかけて守りたい
もうそれが勝手に頭に響く声なのか、俺の本心なのかもわからない。
(それでも今は、これが正しいことだと思う)
俺は声を出さないよう静かに泣く彼女を、いっそう強く抱き寄せた。