すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
そんなことを考えていると、またじわりと涙が出そうになる。
(やばいやばい! すぐに思い出に浸って感傷的になっちゃう! 食事に集中しなきゃ!)
気を抜くとすぐに泣いてしまいそうだ。私はそんな気持ちを振り払い、ガブリとサンドイッチにかぶりついた。
「いい食べっぷりだな。お茶を飲まないと喉につまるぞ」
言われたとおり手渡された温かいお茶で飲み込むと、喉から胸、そしてお腹にじんわりと温かさが通っていく。
(私、本当に生きてるんだ……)
美味しい食べ物に、温かいお茶。それらが一気に体に入ったことで、どこかふわふわしていた現状に実感が湧いてきた。私がまたカイルにペコリとお辞儀をすると、カイルは「それはお礼の動作なんだな」と笑っている。
出された食事を全部食べ終え、二杯目のお茶を飲んでいると、カイルが地図を広げてこれから行く場所の説明を始めた。
「まずは、このケーナという町に寄るつもりだ。そして最終的には聖教会に行こうと思っている」
「……っ!」
(嬉しい! 教会に連れてってもらえるんだ!)