すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「す、すまない! 決して馬鹿にしているわけじゃない」
それでも私がじとっと睨むと、カイルはさっさと私の手をひっぱり、舗装されている道に向かっていく。
(はあ……これじゃあ、完璧に子ども扱いだよね。カイルを取り戻すにしても、また好きになってもらわないといけないのに、前途多難だ)
そもそもカイルは私のどこを好きになってくれたんだろう? そういう甘い会話をする前に日本に戻っちゃったから、自分の良さをアピールしたくてもわかんないな。
(私は真面目で正義感が強くて、騎士としてかっこいいカイルをすぐに好きになっちゃったけど……)
あの時の私って料理や身の回りのことは全部他人任せで、女性らしいところなんてなにひとつ見せてない。初対面では気が強いところ見せちゃったし、本当にカイルは私のどこを好きになってくれたの……?
考えれば考えるほど、深みにハマって落ち込みそう。するとその様子を察したカイルが、心配そうにこっちを見ていた。
「今日は大変だったから疲れたな。でも大丈夫だ。ほら、あれがケーナの町だ」
カイルが指差すほうを見ると、たしかに小さな町があった。賑わっている様子で、遠くからでも馬車や人が出入りしているのが見える。